「茶道筌蹄の記述の中には、今では消えてしまった点前作法や今と違う扱い方など新しい発見がいろいろあります。中柱のある座敷では鎖や自在は使わないと有ります。これは今も小間の台目席で釣り釜をする事はありません。稲垣休叟は、これに注をつけて、中柱のある茶室で自在は使わないと小庵が言った、と記しています。自在や鎖は、茶室が囲炉裏の間から発展した事を考えると、小間であれ広間であれ使って構わないと言うのが古い伝承でしょう。しかし如心斎は「極侘ハ格別」とあります。つまり大わびの茶人には、こうしたルールは適当しない、と言う事です。大侘びになれば、一切の作法や心得を超越した存在ですからそれにとらわれる必要はありません。それであればこそ大侘び、極侘びです。中柱のある台目席でも不定形の囲いでも、自在で釜を釣って一向に差し支え無い、と言うわけです。」
表千家機関紙同門 平成21年5月 千家人物散歩 熊倉功夫氏
表千家機関紙同門 平成21年5月 千家人物散歩 熊倉功夫氏